『北極百貨店のコンシェルジュさん』の英語版に対して書評をいただきました。
https://www.comicsbeat.com/manga-review-the-concierge-at-hokkyoku-department-store
この漫画は資本主義が大量絶滅を引き起こしたと示しながら同時に大量消費によって絶滅種を慰霊しているが、西村は何が言いたいのか?と問いかけられ、真剣に読んでくださりとても嬉しかったので、回答になるかわからない何かを書いてみます。
(1)絶滅種と人間の子供が出会って交流がはじまる中編漫画の案を提出したところ掲載誌の条件(各話読み切り)を満たさず見送られました。そこで動機から見直すことにしました。
(2)子供のころ地球環境問題に関心があって絶滅種に思い入れを持ち、そのため後年ナチスの自然保護主義とオーロックス脱絶滅計画にみる人種主義的な情熱を知り困惑しました。一連の経験から、このように思い入れと困惑が同時にあるさまを伝えたいという動機を見つけました。
(3)一方で思い入れをコンシェルジュ物語として、他方で困惑を寓話として(人間は絶滅/最盛期を象徴する大量消費で絶滅種を慰霊)描くことで、動機を担保した各話読み切り連載がはじめて可能になりました。
(4)大量消費の典型である商業漫画という媒体を選び、効率よく大量消費を回す連載システムに適合し、資本主義を肯定するお仕事ものジャンル漫画を積極的に表現し、大量消費を祝福する保守的な物語を貫徹し、その最後に、これらの全ての瞬間に巨大な反省の契機があったと示すことで、思い入れと困惑を同時に伝えました。まさに今回いただいた書評のような視点を持っていただくことが本望であり、これからはその眼でもって我々が生きるこの世界を隅々まで眺めていただけたらと思いました。