わたべ淳先生『レモンエンジェル』(1988〜90)の続編『レモンエンジェルⅡ』は2008年にケータイサイトで連載されました。この両方ともが完全版(電子書籍)に収録されています。
つまり2020年の現在からみて、1人の作者によって描かれた約30年前のマンガと約10年前のマンガが一度に読める形になっているわけななので、ちまたで言われる「流行の30年周期」(10年前が一番古く見える/30年前は一周して新鮮に見える)を検証してみました。
1988年の『レモンエンジェル』は人物と背景が分離されており、時折コピペや写真コラージュもさしはさまれ、このままネオンカラーに彩色すればfuture funkのサムネイルに使えそうな、今でいうニューレトロに当たるポップ感覚があり、たしかに一周まわって今っぽい絵柄だと感じます。それに対して2008年の『レモンエンジェルⅡ』は顔のデフォルメがより控えめに、線はより繊細にこなれていて、キャラと背景が有機的になじみ叙情を醸し出す、00年代以降の電撃大王のような解像度を感じます。決して古くはないですが新鮮というには見慣れた絵柄です。
というわけで今回は、自分の印象では「30年周期説」はかなり妥当だと感じました。
さて、今後もその説が当てはまるとすると、2038年になれば我々の感覚がまた変容しており今度は『レモンエンジェル』よりも逆に『レモンエンジェルⅡ』のほうが新鮮に見えていると思われます。今とは異なる未来の感覚を想像するとワクワクします。2038年になったらまた『レモンエンジェルⅡ』を読み検証しましょう。