2021-09-01

台北にできるギャラリー「衛星」のオープン記念グループ展に参加しています。9月4日から10月25日のあいだ、台北にいる人は、ぜひ見てください。

2021-08-31

 
 
 
 
 
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2021-08-18

2016年に谷崎潤一郎作品をテーマに11人の作家が競作した漫画アンソロジーがこのたび増補・文庫化された『谷崎マンガ 変態アンソロジー』が8/20に出ます。拙作「人間が猿になった話」も載っています。ぜひ見てください。

2021-07-29

加藤久仁生さんとのトークイベント配信を見てくださった皆様、ありがとうございました。加藤さん、絵やアニメーションなど創作のお話から、かつてモトリー・クルーのトミー・リー氏に憧れてドラマーをされていた雑談まで、なんでも話してくださりとても嬉しかったです。司会の福音館岡田さん、代官山蔦屋書店さん、ありがとうございました。

東京五輪が強行される時期とかさなるため、コロナ感染拡大を危ぶんでオンライン開催となりました。展示はひきつづき8月19日までやってます。

今回展示している絵の額装アートプリントや、「さいごのゆうれい」マグカップや「オイモはときどきいなくなる」のお菓子セット、コラボのポストカードや一筆箋やバッジなど、フェアのためのグッズの数々は、オンラインでも販売されてます。見てね→

2021-07-21

『さいごのゆうれい』×『オイモはときどきいなくなる』 ー往還-うら山のロールキャベツ
蔦屋書店2号館1階ギャラリースペースにて昨日はじまりました。8月19日まで開催中です。

7月28日、加藤久仁生さんとオンラインのみでトークイベントを配信します→

あるいは現代のプロメテウス

漫画家のあいだではよく知られた技として「替えたばかりのペン先には余分な工業油がついていてインクをはじくので火で軽くあぶってから使う」というのがあります。手塚治虫先生の『マンガの描き方』でも紹介された技ですが、これに対し「いや、それ別に描きやすくならないよ」という意見もあり、そこは漫画家によって諸説ある感じです。じっさい物理的にはどうなの?というと、はっきりとした回答はひとつあって、文房具メーカーさんから公式に「火であぶるとペン先の硬度が変わるので、メーカーの立場から言うと、あぶらないのが正解です。うーむ、まさに都市伝説だ。」という見解が過去に出されています。それを見て、ああこれだめなんだ、と思った人も多いかと思います。

しかし2021年、

漫画制作の主流はすでにデジタルに移行して久しく、ネットワーク効果などさまざまな点でデジタルの優位性は増す一方です。若い人がデジタルなのは当然として、かつてアナログだった人もデジタルへの移行を一度も検討しないではいられない今、ペン先を火であぶるという話は少しなつかしい感じがします。今となっては、そんなメーカーさんが否定するような非合理な技がそもそもどうして流布しえていたのか、デジタルネイティブ世代からすれば意味不明に思われるかもしれません。

自分も含め多くの漫画家がペン先を火であぶった理由はたぶん、実際にペン先を火であぶるとインクがなじむようになる、という現象を体感したからだと思われます。

あえてメーカーさんが「都市伝説だ」とつよめに反論したのは、「商品に不要な油がついてる」が悪印象になることを恐れたためという気がします。もちろん自分としては商品になんの文句もなく、めっちゃ満足してめっちゃ買っているという前提の上であえて言わせていただくと、漫画家はペン先の硬さに対しても敏感だと思います。自分が経験したからって正しいのかという謎はあるとしても、諸々知ってやってることに「都市伝説だ」というのは微妙に話がすれ違ってる気がします。

ところで、自分はペン先を火であぶって油を飛ばした後さらに水につけます。この、あぶった直後にペン先を水につける行為はたぶん何の効用もないです。むしろ急熱急冷でペン先がより歪むはずなのでデメリットがあります。ただ一つだけめちゃくちゃ良いことがあって、最高に職人っぽい。

これだけのために机に常備してあるライターに火をともす。ペン先を近づけて2〜3秒間あぶり、油が飛んで少し焦げたそれを、水に浸した瞬間小さく「チュッ」と音がする。このとき脳内に展開しているのは、鍛冶屋が剣を炎にかけて鍛え、赤熱したそれを水に浸して冷やしているイメージ。

職人っぽさを満喫したくて無意味な工程を増やすなんて職人が一番嫌うこと、本末転倒だと思われるかもしれません。でも考えてみてください。ペン先を火であぶるとき、正直その行為が妙にかっこよく感じる気持ちはなかったでしょうか。やったことない人も想像できるはず。ライターに火をつける、ペン先をじりじりと近づける、火を見つめる瞳のハイライトに三角の影が映り込む、一本気な職人の横顔、それ。その気持ちこそ「都市伝説」がいくら非合理と暴かれても根絶されず生きてきた所以ではないでしょうか。

喫煙者と同じように、世の中にアナログ漫画家の生きられる場所はみるみる狭くなっていく。昔は大きめの文房具店ならしばしばスクリーントーンが買えたのに、今やごく少数のお店でしか買えず種類も限られる。若い編集者はB4サイズの生原稿のでかさに驚き、紛失や破損など余計なリスクを煙たがる。漫画家の「まあ色々と手間はかかるけどオレっちの自業自得だからよ」という居直りは嘲笑もされず、ただ周りに迷惑をかけ価値観のアップデートを放棄した無自覚で残念な老害の典型とされうる。

アナログによる作画にどのくらい自分の尊厳があるのか正直自分でもわかりません。そんなものないと思っていたけど、10年前、書店で誰かのデジタル漫画がトンボのある原稿用紙に印刷されあたかも本物の複製原画のように飾られてるのを見て思わず激昂してしまったことがあり、自覚以上に劣等感を抱えている保守的な自分を思い知りました。

堂々と私が私の死を死ぬためには、できるだけ何ごともないかのような顔をして生きたい。デジタルに完全移行してない身で合理性とかシャバいことを言うつもりもない。こうなったら後悔したり謝ったら負け。どうせならペン先を火であぶるだけでなく、ライトボックスの蛍光灯で目をつぶし、稿料を現金書留で受け取り、ベレー帽をかぶり、部屋で逆立ちをし、共同の流しで水浴し、丸が描けなくなったと言いながら、2階の窓から抜け出して、どこまでいけるか試したい。

火を見つめてスピるのは厨二病だ、ワナビーだ、非合理だ、都市伝説だ・・・と反省してみても、もともとそんな火やスピや厨二病やワナビーや非合理や都市伝説こそが自分の全てだったかもしれません。 

「やはりね、どこか描きにくいようにも感じていたが、やはり都市伝説だったんだ。

まあ自分の場合、己の魂に火をつけペンの”“となるためにやってるから、多少不便があっても上等なのだけど。

「主」とは燭台に灯る火をあらわす象形文字で、「火 > ひとところにとどまるもの > あるじ」と意味が転じたものだそう。あるいは別の説によると、かつては神聖な灯火を守ることが家の「あるじ」の誇り高いつとめであり、そこから意味が転じたとも。

ギリシア神話ではプロメテウスが人間に火を与え、その火を基盤として人間は文明を作った。一方で華々しく科学技術を発達させ、他方でゼウスの予言通りに武器を造り戦争をはじめた。そんな歴史の果てに大事なiPadやクリスタやシンティックを手に入れた君に、ひとつ忠告があるとしたら、ゆめゆめ謙虚でいることだ。火を支配したつもりで火に支配されるのが人間の常でね。

火、よかったら君にも分けてあげようか」

今後はこれでいきます。