2023-01-28

バスクのスポーツのアルバム「AVATAMA」を聴きました。1曲目「Exodus」が大好きです。打ち込みや電子音と人力との丁々発止なやりとりに新しい物語がつまっているように感じました。2曲目で歌声に導かれてらせん階段を一歩ずつ上っていくと、4、5曲目で大好きな1stアルバムのような必殺の雰囲気もいっぱい感じれて嬉しかったです。6曲目「Halo」で宇宙から来た暴れ馬みたいなシンセのリフをバンドが立ち合いで瞬時に乗りこなしていくのがしびれました。8曲目「Eye of Howruis」は祝祭系エンジョイサウンドを正に体現しており世界規模で物理的に機能すると思うのでW杯の公式テーマソングになってほしいです。3、7、10曲目といった短い曲がかわいくてとても好きです。9曲目「Execution(d.p.)」で厳粛な静けさの果てに突然押し寄せるバスクらしい躁狂な終幕は劇的に刺さりました。

1stアルバム「運動と食卓」でファンになりました。その後ライブで発表された思い切り打ち込みが導入された新曲たちも大好きで、次作どうなるの?とワクワク待った2ndアルバムでした。Areaやポストロックが元々好きでノスタルジーを仮託しがちな自分にとっては、来たるべき世界への門が開け放たれるたくみな自立支援型ケアのようにも感じて、バスクのスポーツがかつて提唱した「幸せ翁計画」ってこういうことかもしれないと思いました。同じ曲がライブ/配信ライブ/アルバムではそれぞれ異なる響き方をして、謎もふくめて楽しかったです。祝祭における人力要素の意味を強く感じました。

これは録音や演奏のことを何もわかっていない自分の印象なので全く見当違いかもしれませんが、先行シングルでも感じていたことですが、以前よりも耳に優しく聴こえる気がしました。「Eye of Howruis」などはライブで聴いた初期はリフを主導するのがシンセだったのがいつしかギターに代わってよりバンド度の高い攻撃的なアレンジに改造されたとも考えられますが、それでいてすっきりと落ち着いた何かオーガニックなふうに聴こえて、録音やミックスの方針が変わったのかな?と思いました。でもこれは普通に考えてライブで見られる荒々しくデフォルメされた怪物のような暴力性にさんざんときめいてきた自分がこの曲を脳内で怪物化させすぎてしまったことによる印象なんだと思います。とにかく、暴力性のみならずより複雑な表現ができる人たちで音楽の素養が高いと思うので、より自由な表現の可能性が開けている道を行くことは当然ながら応援したいと思いました。多彩な景色が描かれていてロマンに溢れためっちゃいいアルバムだと思いました。みんな聴いてほしいです。